精神障害者保健福祉手帳の申請と交付

障害者手帳を持つことは、自他共に自分を障害者だと認めることになるため、気が進まない人も少なくありません。精神障害者手帳をまだ持っていない人や申請するかどうか悩んでいる人に向けて、精神障害者手帳の申請と交付、精神障害者手帳を持ってることで得をするサービスについてご案内します。

精神障害者保健福祉手帳とは

所持している人に一定程度の精神障害があることを認定するのが精神障害者保健福祉手帳です。精神障害者が進んで社会参加し自立できるよう、手帳には様々な制度やサービスが存在します。

精神障害者保健福祉手帳は1995年(平成7年)10月に制定されました。身体障害者手帳や療育手帳より比較的新しく設けられた制度で、各都道府県と政令指定都市によって発行されています。2016年(平成28年)の時点で約92万人が精神障害者保健福祉手帳の交付を受けています。

通称「精神障害者手帳」ですが、手帳の正式名称は「精神障害者保健福祉手帳」です。「精神障害者」と記載されていると利用しづらいという意見もあることから、手帳の表紙には「障害者手帳」と記載されています。

精神障害者手帳の対象となる疾患

精神障害により長期に渡り日常生活または社会生活に制約がある人を対象に交付しています。2010年(平成22年)に障害者自立支援法が改正され、障害者の範囲が見直されました。その際、発達障害は世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)において精神障害のカテゴリーに含まれていることから手帳の交付対象となりました。しかし二次障害による精神症状の有無など、交付判定に細かい基準が設けられています。

  • 統合失調症
  • 非定型精神病
  • 双極性障害
  • てんかん
  • 中毒精神病
  • 精神遅滞を除く器質精神病
  • 高次脳機能障害
  • 精神神経症状を伴う発達障害

精神障害者手帳の区分

精神障害者保健福祉手帳の区分は3つに分けられており、1等級から3等級まであります。

各等級には判定基準がありますが、これらはあくまでも目安であり、申請してから各都道府県・政令指定都市と市の精神保健センターで審査され、そこで何級になるか初めて決まります。例えば判定基準が2級で、医師からも2級相当の症状があると診断された場合でも、2級の障害者手帳を取得できるとは限りません。精神保健センターでの審査で3級と認定される場合もあります。

1級
精神障害によって常に誰かの援助や介護がなければ日常生活を送ることが難しい状態です。例えば外出や食事の用意、入浴などの身の回りのことを一人で行うことができません。
2級
誰かの助けがなくても一人で外出したり、障害者自立支援法に基づく就労支援、小規模作業所での単純作業程度ならできる状態です。しかし、予想外の出来事など、少なからず本人がストレスを感じる状況に直面した場合は対処しきれない傾向にあります。日常生活では誰かのアドバイスや手助けが必要で、清掃・洗濯・入浴などを一人で行うのが難しい傾向にあります。
3級
一人で外出したり、障害者自立支援法に基づく就労支援や小規模作業所などに参加することができます。それに加えて一定の配慮がある職場では一般就労できる場合もあります。しかし本人が過大なストレスを感じる状況に直面した時、一人で問題を解決するのが難しい傾向にあります。

精神障害者手帳の申請方法

精神障害者保健福祉手帳は、病院で精神障害があると診断された日から6か月以上経過して、初めて申請することができます。病名変更や転院がある場合には医師との相談が必要です。書類審査後、2か月程度で手帳が発行されます。なお、手帳の交付に年齢制限はありません。

まずは医師に今後の治療方針を確認し、障害者手帳の取得について相談します。医師の同意が得られたら、各区市町村の障害福祉担当窓口に出向き、手帳の申請に必要な書類を受け取ります。

医師による診断書を含め、必要な書類が用意できたら障害者福祉担当窓口に提出します。障害者手帳用診断書には「医療機関での初診日から6か月以上経過して作成されたもの」「作成日から申請まで3か月以内のもの」という指定があります。医師から診断書を受け取ったらできるだけ早く窓口に提出するようにしましょう。

精神障害者手帳での写真貼付

以前はプライバシーへの配慮から、精神障害者保健福祉手帳に本人の写真を貼らなくてもよいとされていました。しかし写真がないと本人確認ができないことから手帳を身分証として利用できない、手帳による制度やサービスが受けられないといったデメリットが生じました。手帳による制度とサービスの拡大、そして活用を促すため、2005年(平成17年)に障害者自立支援法成立に伴う精神保健福祉法の改正を受け、2006年(平成18年)10月1日より写真貼付欄のない旧様式の手帳から、写真貼付欄のある新様式の手帳に変更されました。

現在、精神障害者保健福祉手帳は写真の貼付が原則義務づけられています。 しかし飽くまでも原則なので、諸事情により写真を張りたくない場合は写真なしの手帳を交付してもらうことも可能です。

障害者手帳のカード化

2019年(平成31年)4月、身体障害者手帳と精神障害者保健福祉手帳にカード型が導入されました。療育手帳については国の通知に基づいて都道府県や政令市が独自の体裁で発行できるため、既に一部の自治体がカード型に対応しています。

障害者手帳のカード化は義務ではありません。障害者本人やその家族の希望を踏まえて手帳型かカード型のどちらかが選択できるようになります。カード型を希望しなければこれまで通り手帳型が交付されます。

カードの素材は耐久性のあるプラスチックで、運転免許証やクレジットカードと同じ一般的な財布に入るサイズです。身体障害者手帳の場合、視覚障害者に配慮してカードには「切り欠き」や「点字シール」が施されるそうです。

精神障害者保健福祉手帳の場合、カードの表には顔写真・氏名・住所・生年月日・障害等級・手帳番号などが記載され、裏は有効期限の更新を加筆する仕様になっています。つまりカード型は更新の度に新しく作り直すのではなく、更新欄限度まで加筆する形で、何年もの間一枚のカードを使い続けることになります。

障害者手帳の変更と更新と返還

精神障害者保健福祉手帳は定期的な更新が必要です。更新は2年毎で有効期限の3か月前から申請できます。その際には新規申請の時と同様の必要書類と、現在交付されている手帳の写しが必要です。

有効期限内に症状が悪化したり、障害年金の等級が変更になった場合は、障害等級の変更を申請することができます。症状が軽減したり、手帳を所持し続けるメリットを感じなくなった場合は、更新時に手帳を返還できます。手帳の返還後は登録されている生年月日や交付番号は削除されるなど、プライバシーに配慮した処置がなされています。

障害者手帳のメリット

障害者が進んで社会参加できるよう、障害者手帳には様々な制度やサービスが存在します。その代表的なものに障害者向けの就労支援、障害者優先駐車場、レジャー施設での障害割引などがあります。何が割引の対象になるのか、どのようなサービスが受けられるのかについては、各自治体や企業により提供の形が異なります。また、障害の種類や手帳の等級によって受けられるサービスに制限があります。

精神障害者保健福祉手帳は身体障害者手帳や療育手帳に比べて受けられる制度やサービスが少ないです。障害の有無や、三障害(身体・知的・精神)に基づく差別(差をつけて扱うこと・分け隔て)を解消するため、2016年(平成28年)4月に「障害者差別解消法」が施行されました。これまで身体障害者・知的障害者のみ対象としてきたサービスが精神障害者にも適用される運びとなります。この法律の施行を受け、2018年(平成30年)に各航空会社は身体障害者・知的障害者に続き精神障害者にも国内線の特別運賃の範囲を拡大しました。

1. 障害者控除・税の減免

障害者手帳1級は特別障害者、2級または3級の人はそれ以外の障害者として障害者控除の対象です。

所得税の控除
納税者本人が障害者である時は、障害者控除は27万円(特別障害者は40万円)となります。控除対象配偶者または扶養親族が障害者の時は、1人当たり27万円(特別障害者の時は1人当たり40万円)の障害者控除を受けられます。

控除対象配偶者または扶養親族が特別障害者で、納税者またはその配偶者もしくは納税者と生計を共にする親族のいずれかと常に同居している時には、障害者控除として1人当たり75万円となります。
住民税の控除
住民税の場合、障害者控除は26万円(特別障害者は30万円)になります。
相続税の障害者控除
相続人が障害者である場合は、85歳に達するまでの年数1年につき10万円(特別障害者は20万円)が障害者控除となります。
自動車税・軽自動車税・自動車取得税の減免
精神障害者保健福祉手帳を交付されている人が使用する車について、本人が1級の手帳を持っているなど一定の条件を満たす場合は、申請により自動車税・自動車取得税の減免を受けることができます。
預貯金の非課税(マル優、特別マル優)
精神障害者保健福祉手帳を交付されている人が銀行などの350万円までの預貯金、貸付信託、公社債、公社債投資信託などで受け取る利子などについては、一定の手続を要件に非課税の適用を受けることができます。これをマル優、特別マル優と呼び、預け入れ等の際に金融機関の窓口などに確認書類として手帳を提示して確認を受ける必要があります。
特定障害者に対する贈与税の非課税
特定障害者とは特別障害者および精神障害者のことをいいます。

特定障害者が生活費などに充てるために、一定の信託契約に基づいて特定障害者を受益者とする財産の信託があった時には、その信託受益権の価額のうち、特別障害者である特定障害者には6,000万円まで、特別障害者以外の特定障害者には3,000万円まで贈与税がかかりません。この非課税の適用を受けるためには、財産を信託する際に「障害者非課税信託申告書」を信託会社を通じて所轄税務署長に提出する必要があります。
特別障害者手当
精神または身体に重度の障害があり、日常生活において常時特別の介護を必要とする特別障害者に対しては、特別障害者の負担を軽減するため、手当が給付されます。精神障害者保健福祉手帳を交付されている重度の精神障害者については特別障害者手当受給申請時の診断書の提出を省略できる場合があります。

特別障害者手当は、精神または身体に著しく重度の障害がある在宅の20歳以上の方に支給されます。目安としては概ね身体障害者手帳1、2級程度および重度の精神障害が重複している人、もしくはそれと同等の疾病・精神障害のある人です。

支給額は月額26,830円ですが、医療機関に継続して3か月を超えて入院している人、障害者施設などに入所している人には支給されません。また所得制限があり、申請者の所得が所得限度額を超える場合や、受給者の配偶者・扶養義務者の所得が所得限度額以上である時には手当は支給されません。
心身障害者扶養共済制度に基づく給付金の非課税
地方公共団体が条例によって実施する心身障害者扶養共済制度に基づいて支給される給付金(脱退一時金を除く)については、所得税はかかりません。この給付金を受ける権利を相続や贈与によって取得した時も、相続税や贈与税はかかりません。

2. 各種料金の割引・減免

手帳の交付に加え、ある一定の条件を満たしている場合は、以下のサービスで利用料の割引・減免が受けられることがあります。

レジャー施設での障害割引・サービス
映画館や美術館、遊園地やプールといったレジャー施設では、障害者手帳を提示すると無料になったり割引が受けられるサービスがあります。また、施設をスムーズに利用できるよう特別な配慮が受けられることもあります。
公共交通機関の運賃割引・減免
飛行機・バス・電車・タクシーといった公共交通機関は、障害者手帳を提示することにより割引や減免になる場合があります。しかしJRなど障害割引を適用していない交通機関もあるので事前確認が必要です。
NHK放送受信料の免除
手帳の所持者が家族におり、家族全員が市町村民税非課税の場合、受信料の全額が免除されます。また精神障害者保健福祉手帳1級の所持者が世帯主で、かつ受信契約者である場合は半額が免除されます。
公共料金の割引・減免
水道代などの公共料金の基本料金が減免される場合があります。条件や割引金額は自治体によって異なります。
携帯電話の割引
大手携帯会社3社では障害者手帳を交付されている人に対し割引があります。

ドコモ「ハーティ割引」

  • 基本使用料が1700円割引
  • 各種サービスの月額使用料が60%割引
  • テレビ電話通話料が音声通話料と同額
  • 契約事務手数料一部無料

au 「スマイルハート割引」

  • 基本使用料(カケホ)が1700円割引
  • 通話料最大50%割引

ソフトバンク「ハートフレンド割引」

  • ホワイトプランの基本使用料無料
  • パケットし放題、パケットし放題S for スマートフォンの下限額が0円から利用可能
  • TVコール国内通信料が50%割引

3. 生活支援・助成

医療費の助成

精神障害者保健福祉手帳の区分によっては、医療機関などで診療を受けた際の医療費の一部が助成対象となる場合があります。現在、主に該当する人は1級の精神障害者保健福祉手帳を所持している人です。

精神障害者居宅生活支援事業
精神障害があり、日常生活を送る上で支障がある人への支援を行っている事業です。市区町村が地元の事業所と協力して提供しているサービスとして、ホームヘルプサービスなどがあります。

ホームヘルプサービスとは支援を希望する精神障害者の家庭にホームヘルパーが訪問し、掃除、洗濯、調理など家事援助・身体介護・外出介護を行います。

これらのサービスを受けるために必ずしも手帳を持っている必要はありませんが、所持していることで、申請を比較的スムーズに行えます。しかし、申請方法やサービスは市区町村によって異なるため、在住の自治体に詳細を確認する必要があります。
避難行動要支援者支援制度への登録
東日本大震災では犠牲者の約6割が65歳以上の高齢者で、障害者の死亡率も被災者全体の約2倍となりました。国は東日本大震災を教訓に、災害対策の強化を図るため、2013年(平成25年)6月に災害対策基本法を一部改正し、災害時に自力での避難が困難な避難行動要支援者(主に高齢者や障害者)を対象とした名簿の作成を各自治体に義務付けました。

この法改正に基づき、2006年(平成18年)から実施している「災害時要援護者支援制度」は、2017年(平成29年)8月より「避難行動要支援者支援制度」へ移行しました。

1人でも多くの命を救うことを目的とした避難支援体制作りのために、避難行動要支援者を事前に自治体が名簿登載し(避難行動要支援者名簿)、本人の同意を得た上で、名簿情報を避難支援等関係者に平常時から提供します。避難行動要支援者名簿には避難行動要支援者の氏名、生年月日、性別、住所または居所、電話番号や避難支援を必要とする理由などが記載されます。

日頃から要支援者が「どこに」「どれだけ」居て、「どのような状態なのか」を予め把握し、地域の最小単位の中で、災害発生時に避難行動要支援者に対し、避難支援や安否確認等を行うことを目指した仕組みが、避難行動要支援者支援制度です。

この制度の対象者の範囲は自治体によって異なります。基本的に要介護者、65歳以上の高齢者、障害者手帳1級程度の重度障害者などが対象となるようです。

4. 教育への支援

障害者手帳があると申請や利用の際に手続きを円滑に行えるようになります。

保育園の場合、自治体によっては子供本人や保護者が手帳を交付されていたり、手帳を交付されている家族に介護が必要な場合、入園の優先順位が上がることがあります。特別支援学校への入学を希望する時には出願の際に子供の障害のレベルを証明するものとして手帳の写しが必要なこともあります。

5. 職場定着・就労支援

障害者手帳を交付された人は、障害者雇用制度における就労支援を受けることができます。

障害者雇用促進法は2013年(平成25年)に改正され、2016年(平成28年)4月に施行されました。障害者の職場定着と自立を促し、事業主に障害者の雇用、合理的配慮、障害者差別の禁止などを義務化する内容です。更に2018年(平成30年) には法定雇用率の算定基礎に精神障害者を加える改正法が施行されました。

事業主に義務付けられた合理的配慮とは、障害者が円滑に仕事ができるよう障害の特性に配慮し、過度な負担にならないよう変更や調整を行うことです。障害の種類や程度、周囲の環境、配慮をする側の状況により変化するため、具体的にどのような配慮が可能かどうかは障害者と事業主が相談して決めます。そのため合理的配慮の具体的な内容や程度については明確に定められていません。

障害者差別の禁止とは、障害を理由に採用を拒否したり、賃金を低く設定したりするものです。なお、事業主に求められる「雇用義務」とは「必ず雇用しなければならない」ということではありません。雇用対象に障害者も加わっているという意味です。

就職1年後の職場定着率について障害種別に見ると、身体障害で60.8%、知的障害で68.0%、精神障害では49.3%(発達障害は71.5%)となっています。精神障害者は職場定着が困難で離職率が高い傾向にあります。しかし、ハローワークや就労支援機関からサポートを受けている場合は職場定着率が高いようです。就労の際にどのような支援を受けているかが職場定着に大きく影響していると考えられます。

6. 就労パスポートとは

離職率の高い精神障害者や発達障害者、高次脳機能障害者を主な対象とした就労支援が厚生労働省が導入を進めている「就労パスポート」です。本人の希望があれば他の障害者も活用できます。

就労パスポートは障害者本人が障害特性やアピールポイント、仕事をする上での希望や配慮を取りまとめて事業主に説明するための活用ツールです。履歴書や職歴書と同じ、事業主が採用選考時に情報を共有するフォーマットの一種です。事業者は就労パスポートを参照することで障害者本人や関係者と共通認識を持ちながら面談することができ、障害の特性に応じた関わり方について話し合えます。就労パスポートは障害者が働く上での希望や困り事を説明するためのものであり、事業者が就労の可否を評価するためのものではありません。また、就労パスポートを所持していないからといって不利な取り扱いをすることは適当ではありません。

就労パスポートの作成は障害者本人が行います。ハローワークや支援機関でも担当者が必要に応じて作成をサポートします。作成した就労パスポートは本人が管理し、必要に応じて更新します。

障害者手帳のデメリット

基本的にデメリットはありません。せいぜい手帳の申請・更新時に診断書記述料が必要なくらいです。精神障害者手帳は2年毎の更新制なので手帳が必要なくなれば返還できますし、返還後はプライバーに配慮して登録情報は削除されます。

世間体を気にする家族から手帳の取得を反対されたり、周囲に障害者だと知られるのを恐れて手帳を活用できないなど、障害者に対するネガティブなイメージが障害者手帳の最大のデメリットだといえます。


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